屋根工事3つの修理方法
屋根工事には大きく分けて3つの種類があります。お住まいに使われている屋根材の種類や現在の状態によって修理の方法が異なります。ここでは代表的な修理方法を詳しく解説していきます。
目次
塗り替え・塗装工事

症状と工事の時期
カラーベスト(スレート・コロニアル)葺きの家が対象の工事です。新築から10年程度が経過すると屋根全体に色あせが発生したり、カビや苔が生えてきます。そのまま放置をすると屋根材の強度が低下していき、台風等で強風が発生した際に屋根材が剥がれて落ちる事があります。日当たりが良い南面では色褪せが早期に発現し、日当たりの悪い北側や山林が近い位置にはカビや苔が発生します。
カビ | 苔 | 割れ |
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施工方法
屋根塗装は4つの工程によって施工を行います。屋根は外壁と異なり常に風雨や直射日光にさらされる過酷な環境下にあるため施工方法には十分注意を払う必要があります。ここでは各工程の解説をします。
1)洗浄

最初の工程は洗浄工事です。屋根の上にはホコリや塵、カビや苔などで汚れている状態です。このまま塗装をしても塗装が密着したいため高圧洗浄機を使い表面を綺麗に洗浄していきます。またカビや苔などの繁殖が激しく高圧洗浄だけでは除去が難しい場合には、塗料メーカーから販売されている専用の薬剤を用いて除去を行います。
2)下地処理

次の工程は下地処理の工程となります。カラーベストやコロニアルといった屋根の塗装を行う場合に最も重要なのが下地処理の工程です。この工程では主に屋根材(下地)の強化を行います。使用する下塗り材は各種メーカーから多種多様な物が販売されておりますが、一般的なのはエポキシ樹脂系の下塗り材です。浸透力と固着性に優れており、素早く基材に浸透し水分や炭酸ガスの侵入を防ぎ中性化を防ぎます。上記写真の通り、目安としては屋根材が濡れ色になるように塗布量を調整し施工します。屋根の劣化状態によっては乾燥後に2度目の塗装を行い、完全に浸透・補強されるように施工していきます。

この工程で手抜きをしてしまうと上図のように施工後数年で屋根の塗膜が剥がれきたり、早期の色褪せが起きます。
3)タスペーサーの取り付け(縁切り)

屋根の塗装で欠かせないのがタスペーサー(縁切り)の取り付けです。屋根材と屋根材の隙間が埋まってしまうと、通気性が失われ下地の腐食や雨漏れに直結します。その為、以前は塗装をした後に皮すきを使って縁切りと呼ばれる作業を行っておりました。しかしながら従来の方法の場合、縁切りが確実に行われずに雨漏れや下地腐食を起こす事がありました。現在は縁切り専用部材のタスペーサーを取り付ける事によって確実に、そして素早く屋根の縁切りを完了させることができるようになりました。

4)仕上げ
最後は仕上げの工程です。シリコン・フッ素・ガイナ等の塗料名は、この工程で使用される塗料を指します。各種メーカーから耐候性や遮熱性に優れた塗料が販売されており、ご自身の希望に合わせて仕上げ塗料を決定します。施工方法は各塗料によって異なりますが、一般的には同じ塗料を2回塗装します。

費用の目安
工程 | 1液型シリコン | 2液型シリコン | 4Fフッ素 | ガイナ |
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洗浄 | 200円/㎡~ | |||
縁切り | 40000円(100㎡まで) | |||
下地処理 | 400円/㎡ | |||
仕上げ | 1400円/㎡ | 1600円㎡ | 2400円/㎡ | 2750円/㎡ |
カバー工法工事

カバー工法は既存の屋根の上に新しい屋根を取り付ける工法です。別名で重ね葺きとも呼びます。
症状と工事の時期
カバー工法は、築20年を超えた建物や既に雨漏れを起こしている屋根に対して行う工事です。(注意:瓦葺きの屋根には施工できません)カラーベストやスレート葺きの屋根の場合、築20年を超えている状態で塗装を行うにはリスクがあります。また屋根からの雨漏れがある場合には、カバー工法を行うだけで雨漏れを修理することが出来ます。カバー工法と屋根塗装でお悩みの方は下記ページを参考にして下さい。
カバー工法と屋根塗装の比較

施工方法
カバー工法は4つの工程で施工を行います。
1)洗浄

新しい防水紙を取り付ける前に既存の屋根を綺麗に洗浄しておきます。新しい屋根と古い屋根の間でカビや苔が繁殖するのを防ぐためです。
2)防水紙の取り付け

防水紙は軒先から順番に屋根全体に敷き詰めていきます。種類は様々ですが一般的にはアスファルトルーフィングと呼ばれる商品を使用しますが、屋根の状態に合わせて透湿防水シートや遮熱防水シート等も使う場合があります。
3)本体施工

屋根材本体の取り付けです。新しい屋根材を順番に取り付けていきます。上記写真は縦葺きタイプの屋根材です。カバー工法で有名な商品としては、ニチハ(旧チューオー)の横暖ルーフやアイジー工業のガルテクトですが、どちらも断熱材が裏付けされている横葺きタイプですのでお値段は高めです。
4)役物取り付け
棟やケラバ等のいわゆる役物を取り付けていきます。これらも屋根材のメーカーから専用部材が販売されていますが、屋根の形状によっては専用部材が取り付けられないケースがあります。そのようば場合には、工場にてお住まいの形状にあった部材をプレス機にてオーダー製造して取り付けます。

費用の目安
屋根材 | 参考価格 | デザイン |
横暖ルーフs | 8400円/㎡ | ![]() |
横暖ルーフプレミアムs | 10500円/㎡ | ![]() |
ガルテクト | 8500円/㎡ | ![]() |
ガルテクトフッ素 | 10700円/㎡ | ![]() |
スカイメタルルーフ | 9600円/㎡ | ![]() |
立葺 | 7300円/㎡ | ![]() |
葺き替え工事

葺き替えは、既存の屋根瓦を撤去し新たに屋根を葺き直す工事です。既存の屋根を取り外す事で、野地板の状態も確認ができるので野地板の補修や交換も可能となるため屋根を完全に修理することが可能です。またカバー工法とは異なり屋根の荷重が増えることもありません。費用は解体工事の分だけ増えてしまいますが予算に余裕がある場合は、迷わず葺き替えを選択することをお勧めしています。
症状と施工時期
スレート・コロニアル葺きの場合は約築20年~25年程度、瓦葺きの場合については約築35年程度が目安です。また雨漏れを起こしている場合についても有効です。スレート・コロニアル葺きで施工不良によって築20年程度で野地板が弱ってきているような場合はカバー工法を行う事が出来ませんので葺き替えを選択する事になります。部分的な葺き直しも可能で、例えばトップライト周辺から慢性的に雨漏れを起こしている場合、トップライトを撤去し葺き直してしまうのも有効な手段と言えます。
屋根雨漏れ | トップライト不具合 |
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野地板腐食 | 瓦屋根劣化 |
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施工方法
屋根の葺き替え工事は4つの工程で施工を行います。
1)解体・瓦降ろし

既存の屋根瓦を降ろす工事です。築25年を超えるような日本瓦葺きの建物は土葺きといって、野地板の上に粘土質の土を置きその上に瓦を置いていく工法となっています。土葺きなのか引掛け桟瓦葺きなのかによって解体費用が大きく異なります。また解体した屋根瓦の搬出ルートが確保できるかもコストを左右します。延長敷地等の接道している道路から建物が奥まった位置にある場合などは、瓦の搬出に膨大な労力を要する場合には解体費用が跳ね上がります。
2)野地板張り直し

野地板に劣化が見られる場合は張り直しを行います。築30年を超える建物の場合は、時間の経過にともなって建物に捻じれや歪みが生じている事がありまるので、野地板を張り直す際に不陸調整といって屋根の表面が真っすぐになるように桟木の補強や修正を入れながら野地板を施工していきます。
3)防水紙施工

新しく張り直した野地板の上に防水紙を敷き詰めていきます。カバー工法同様に求める性能に合わせて透湿防水シートや遮熱防水シート等好みに合わせて商品を選択することが出来ます。
4)本体施工
イーグルロック | ||
---|---|---|
スレートブラック | マッドブラウン | 銀富士 |
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屋根本体を葺いていきます。屋根瓦は商品によって重量が大きく異なりますので注意が必要です。元々カラーベスト葺きだった屋根の場合、陶器瓦にすると屋根重量が増加しますので昭和56年以前の旧耐震の建物に施工を行う場合、耐震性能が低下し地震が発生した際に建物が倒壊する恐れがあります。旧耐震の場合には、屋根工事と合わせて耐震補強工事を検討するのもよいでしょう。市町村から耐震リフォームの補助金が受けられる場合もありますので詳しくは建築会社または行政に相談してみましょう。
耐震工事補助事業一覧 | ||
---|---|---|
豊田市 | 定住促進課webサイト | 最大90万円 |
名古屋市 | 耐震化支援室支援係 | 最大40万円 |
費用の目安
工程 | 平板陶器瓦 | カラーベスト | アスファルトシングル |
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解体 | 約50万円~80万円 | ||
施工費 | 8500/㎡ | 8000円/㎡ | 7500円/㎡ |
おわりに
屋根工事は既存の屋根の種類や状態に合わせて必要な工事は多岐に渡ります。まずは正しい診断をしてもらい、どの工事が我が家にとって必要なのかを総合的に判断するようにしましょう。