カラーベスト・スレート葺きにとって築20年~25年というのは、塗り替えをすべきなのか、それともカバー工法をするべきなのかを選択するべきタイミングです。このページではカバー工法と屋根の雨漏れのメカニズムについて解説します。このページを見ているあなたが屋根のメンテナンス方法を検討するための参考としてください。
雨漏れのメカニズム
屋根は野地板と呼ばれる下地材の上に防水紙が敷き詰められ、その上にカラーベストやコロニアル・スレートといった屋根材が取り付けられています。屋根が割れると雨漏れをするというのは実は誤った知識です。屋根が割れてしまったとしても中の防水紙が正常であれば雨漏れは起きません。防水紙は別名でルーフィングとも呼ばれており、建物を雨漏れから守ってくれる言わば縁の下の力持ちのような存在です。カラーベストの構造上、割れていても割れていなくても屋根材の裏側へと水を通してしまう構造となっています。(詳しくは「屋根塗装は必要なのか」のページをご参照ください)その為、防水紙の寿命=屋根の寿命となります。雨漏れの起点となるのは防水紙に打ち込まれた釘の周囲です。

建物が新しいうちは、ルーフィングが釘に密着しているため雨漏れは起こりませんが、時間の経過と共に釘の周囲に隙間が空いてしまい建物内部へと水を通してしまうようになります。大雨が降った際に屋根材の裏側へと大量に水が回り込み、その水と触れ合った釘の周囲に隙間が空いていると2階の天井にシミを作る雨漏れという現象が発生します。そして防水紙の寿命は約20年~25年ですので、築年数が20年を超えた建物の屋根の取り扱いには注意が必要です。それは屋根の上を人が歩くと屋根の下地がしなります。下地がしなるという事はルーフィングも引っ張られる為、人が歩いたことによってルーフィングが破れてしまったり釘の周囲がより一層空いてしまい雨漏れを誘発することになるためです。
カバー工法とは
前述したとおり、築年数が20年を超えた建物の屋根を不用意に歩き回ったり塗装するというのはリスクが高い行為です。したがって雨漏れを防ぎ建物の寿命を延ばす為に行う工事が必要です。一昔前は、葺き替えといって既存の屋根や防水紙を全て剥がし新しい物に交換するのが主流でした。しかし平成18年施行の「建築基準法による石綿規制」いわゆるアスベストの規制によって、アスベストが含まれた建材を撤去する場合には多額の費用が必要となりました。そこで屋根材メーカーが開発したのが、屋根を解体せずに既存の屋根の上から新しい屋根を被せ葺きする工法「カバー工法」です。
カバー工法に使われる屋根材はガルバリウム鋼板と呼ばれる、アルミ55%と亜鉛43.4%とケイ素1.6%を用いたの合金で出来ています。錆びづらく軽量で加工が容易であることから爆発的に普及しました。カバー工法は既存屋根の解体工事を必要としないため工事費用を低く抑えると共に、既存屋根の上に新たに防水紙を施工し直し屋根を載せるため長期に渡って雨漏れを防ぐことができます。
耐震性について
古い屋根の上に新しい屋根材を載せるため屋根の重量が増えます。一般的なスレート葺き屋根の単位面積あたりの重量は23~26kg/㎡となります。ガルバリウム鋼板系屋根材の重量は約5kg/㎡となります。屋根の面積が100㎡と仮定した場合の総重量は5kg×100㎡=500kgとなります。一見すると非常に重いように感じますが、太陽光パネルの重量は約400kg(5kwシステムの場合)で南側の屋根にのみ搭載されますが、カバー工法は屋根全体に均一に取り付けられ荷重が分散されますので屋根への負荷は小さいと言えます。また瓦屋根の重量は約60kg/㎡ですからスレート屋根と比較して2倍以上の重量となります。昭和56年の建築基準法改正後は建物の耐震基準が厳しくなったため過剰に心配する必要はないと言えるでしょう。
瓦屋根 | スレート屋根 | カバー工法 |
---|---|---|
約60kg/㎡ | 約23~26kg/㎡ | 約5kg/㎡ |
葺き替えと比較
もしご予算に余裕がある場合は葺き替えをお勧めしています。解体費用で約50万円~80万円程工事費用が高くなってしまいますが既存の屋根を取り去り超軽量のガルバリウム鋼板屋根にすることで耐震性能の向上を見込めます。但しガルバリウム鋼板の断熱係数はスレート屋根と比較すると低いため、ただ単に葺き替えを行ってしまうと室内の快適性を損なう可能性があります。そのため通気工法や遮熱シートを用いて夏場の断熱対策を検討するのが良いでしょう。
通気カバー工法
夏場の暑さを大幅に軽減するのが通期カバー工法です。既存の屋根の上に縦桟を打ち込み、その上に下地を組む事で新しい屋根との間に通気層を設けます。太陽光によって暖められた空気は上に昇る性質をもっているため、屋根の上部に取り付けられた換気口から熱い空気が排出され室内へ熱を伝えないようにする画期的な工法です。

上部に取り付けられた換気棟からは熱せられた空気だけでなく内部の湿気も外に排出してくれるため、屋根下地や桟木といった木材を長期間に渡って良い状態に保つこと屋根自体の寿命も伸ばすことが出来ます。換気棟は内側の空気や湿気を外に出しますが、外からの雨は中に侵入させない特殊な構造となっておりますので雨漏れ等の心配はありません。

塗装とカバー工法どちらを選ぶか
どちらを選べば良いのかは、建物の劣化状態だけでなく今後の建物の利用期間を含めて検討する必要があります。現在雨漏れ等はなく、10年後には自宅をご売却されるようなケースについては「屋根の工事はしない」というのも1つの選択肢としてご提案しております。とは言うものの当然雨漏れが起きてしまった場合、売却時に建物の評価を付ける事は難しいというのが実情です。折角有名ハウスメーカーで建築した立派なご自宅でも雨漏れしているようであれば、解体更地渡し(土地売り)になってしまいます。土地としての利用価値が高いエリアの場合は土地売りでも買い手は見つかりますが、駅から車で30分以上離れているような場所であれば土地売りというのは非常に難しく折角ローンを払って築いた財産が台無しになってしまいます。専門家と相談をして失敗のない選択をするようにしましょう。